交渉研修の現場から 第2回「交渉における“ジェスチャー”」
NPO法人日本交渉協会常務理事 望月明彦
日本交渉協会が実施している交渉研修(交渉アナリスト実技研修、通学ゼミ土日集中講座、ビジネス交渉アナリスト講座など)で気付いたことをお伝えしていくコーナーです。
交渉研修では、参加者の皆さんに何回もロールプレイングを行っていただきますが、参加者の皆さんの様子をみていると気付くことがあります。それは、ほとんどの方が“じっとして動かない”ということです。日本人らしいと言えば日本人らしいのですが。
一方、参加者のなかには、じつに大きな身振り・手振りで交渉される方がときどきいらっしゃいます。私の印象では、身振り・手振りが大きい方は、営業職などのように交渉に慣れている方が多いように思います。
交渉において活発に身振り・手振りをすることには良い効果があります。体を使って話すほうが、自分の考えを話しやすくなりますし、また相手にこちらの思いも伝わり易くなります。
しかし、ジェスチャーに慣れていない方が無理に体を動かそうとすると、かえって不自然になります。しかもジェスチャーに気を取られて、話す内容を忘れてしまうこともあります。ジェスチャーに慣れていない方は、まずは軽く手を動かすことから始めると良いでしょう。ジェスチャーは、“考えながら”やると不自然になりますから、“自然と”やってみるのがコツのようです。
さて、研修中のロールプレイングでもう一つ気付くことがあります。それは、とても多くの参加者が「目線を手元資料においてしまう」ということです。条件設定等が記載されている手元資料を確認しながら話をするため、こうなってしまうわけですが、まるで手許資料と交渉しているような方もいらっしゃいます。こうなってはジェスチャーどころではありません。実際の交渉の場ではしっかりと相手の目を見て話をし、相手のちょっとした反応やしぐさに敏感にならなければなりません。
そこで、ロールプレイングの直前に、目線を下に落とさないよう声掛けをします。「できるだけ相手の目を見て話をしてください」と。すると、ほとんどの方が目線をあげてしっかり相手を見ながら交渉できるようになります。
手元資料ばかり見ていては、相手の気持ちが分からないだけでなく、相手に不信感を抱かせる可能性もあります。実際の交渉でも、重要なデータや数値はあえて手元資料を見ることも必要ですが、しっかり相手の顔を見ながら話すよう心がけることが必要です。
望月 明彦氏
望月公認会計士事務所代表
特定非営利活動法人 日本交渉協会常務理事
ディップ株式会社監査役 (東証1部上場)(現任)
アイビーシー株式会社監査役(東証1部上場)(現任)
日本公認会計士協会東京会 研修委員会 副委員長(2010~2014)
経済産業省コンテンツファイナンス研究会 委員(2002~2003)
早稲田大学政治経済学部卒。
監査法人トーマツを経て、慶応義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)修了。
その後、上場企業の経営企画部長として資本政策の立案・実施、合弁会社の設立、各種M&Aなどを手掛ける。
さらに、アーンストアンドヤングの日本法人にて上場企業同士の経営統合のアドバイザー等を務める。
2010年より望月公認会計士事務所代表。日本交渉協会常務理事。
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