望月明彦氏による交渉学Web講座

交渉研修の現場から 第1回「交渉ロールプレイングのすすめ」

NPO法人日本交渉協会常務理事 望月明彦

交渉アナリストの研修では、交渉学の理論を説明した後、参加者の皆さんにロールプレイングを行っていただき、交渉知識を試していただきます。二人一組のペアで、片方が売り手、もう片方が買い手となり、それぞれ1~3枚程度の簡単なケースを読み、交渉を行います。短いケースであれば10分程度、長いケースの場合は40分を超える場合もあります。

ロールプレイングはたいへん盛り上がります。交渉後にお互いの手の内を見せ合うなかで、交渉の難しさや面白さを感じ、はじめて会った参加者同士もここで打ち解けます。
しかしロールプレイングはただ楽しむだけのものではありません。その目的を理解するために、ロールプレイングに期待される効果を考えてみましょう。

①交渉後にお互いの手の内を知り、交渉を振り返ることができる

実際の交渉では、合意後も相手の手の内を知ることはできませんが、ロールプレイングでは、お互いの手の内を見せ合いますから、交渉を振り返ることができます。自分にかなり有利な合意内容だと思ったのに、実は相手のほうが有利だったということもよくあります。

しかし、相手の手の内を見て、「やられた~、もっと強気に出てよかったんだ~」と一喜一憂することが大切なのではありません。「相手のあの時のあの反応は、こういう理由があったからなんだ」、「あの時、こういう提案をしておけば、もっと良い解決策がでてきたかもしれないな」と、交渉プロセスを振り返ることが大切なのです。

②普段と違うやり方を試して、スキルアップが期待できる

実際の交渉の場で、普段と違うやり方を試してみることはリスキーです。ビジネス交渉では失敗は許されませんから、結局いつも通りの交渉スタイルになってしまいます。だからこそ、スキルアップがはかりにくいわけです。

しかし、ロールプレイングであれば普段と違うやり方を試すことができます。普段穏やかな交渉スタイルの方が、ちょっと強気な交渉を試してみるといった具合です。

ところが、実際のロールプレイングの様子をみていると、確かにロールプレイングの最初の5分程度はいつもと違うやり方を試しているのですが、やがて交渉内容に集中してくると……、いつもの自分に戻ってしまうことも多いようです。

ロールプレイングは、スキルアップのための良いトレーニング方法です。是非、会社でも社員の交渉スキル向上のために取り入れてみてはいかがでしょうか。

望月 明彦氏

望月公認会計士事務所代表
特定非営利活動法人 日本交渉協会常務理事
ディップ株式会社監査役 (東証1部上場)(現任)
アイビーシー株式会社監査役(東証1部上場)(現任)
日本公認会計士協会東京会 研修委員会 副委員長(2010~2014)
経済産業省コンテンツファイナンス研究会 委員(2002~2003)

早稲田大学政治経済学部卒。
監査法人トーマツを経て、慶応義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)修了。
その後、上場企業の経営企画部長として資本政策の立案・実施、合弁会社の設立、各種M&Aなどを手掛ける。
さらに、アーンストアンドヤングの日本法人にて上場企業同士の経営統合のアドバイザー等を務める。
2010年より望月公認会計士事務所代表。日本交渉協会常務理事。

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まとめ

交渉には自分だけがハッピーになろうとする「分配型交渉」(「ウィン・ルーズ型交渉」)と、自分も相手もハッピーになろうとする「統合型交渉」(「ウィン・ウィン型交渉」)がありました(第1回)。

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